行政書士試験の模試・答案分析方法|失点原因から苦手分野を特定する

行政書士試験の模試を受けたあと、総合点と判定を確認し、間違えた問題の解説を読んで終わりにしていないでしょうか。模試の本当の価値は、合格可能性を一度判定することではなく、現在の失点原因を見える形にすることです。

同じ120点でも、未学習分野が多い受験生、知識はあるのに問題文を読み違える受験生、時間切れで後半を落とす受験生では、次に行うべき学習が異なります。点数ではなく、点数が生まれた過程を分析することが弱点克服の出発点です。

この記事では、模試・本試験答案の準備、正解の確信度4分類、失点原因5分類、科目別・記述式・時間配分の分析、分析結果を14日間の学習計画へ変える方法を解説します。

模試・答案分析の結論

  • 模試中に解答時刻と確信度を記録する
  • 正解を「確信あり」と「迷って正解」に分ける
  • 誤答を知識・理解・読解・時間・戦略に分類する
  • 科目名ではなく論点単位で苦手分野を特定する
  • 記述式は論点・要件・文章化のどこで失点したかを見る
  • 分析後14日以内に解き直しと再テストを行う

模試は「合否予想」ではなく「改善点の検査」

模試の得点や判定は、受験時点の一つの結果です。出題範囲、問題との相性、体調によっても変動します。判定がよくても迷って正解した問題が多ければ不安定であり、判定が低くても原因が一部の未学習分野なら修正の道筋は明確です。

見る対象 分かること 次の行動
総合点 合格基準までの距離 不足点を科目・形式へ分解する
科目別得点 得点源と弱い科目 論点別・原因別へさらに分解する
確信度 再現できる正解と偶然の正解 迷った正解も復習対象にする
解答時間 処理速度と時間切れの原因 解答順序と保留基準を変更する
記述式答案 論点特定・要件抽出・文章化の弱点 失敗段階に合った練習を行う

答案分析の前に準備する7つの資料

  1. 問題冊子
  2. 自分の解答・マーク記録
  3. 成績表と科目別得点
  4. 正解・解説
  5. 記述式の再現答案または答案の写し
  6. 解答順序と時刻の記録
  7. 模試前までの学習範囲・教材・学習時間の記録

確信度と時間は、模試終了後に思い出そうとしても曖昧になります。問題冊子に「○=確信あり、△=二択、?=ほぼ推測」などの印を付け、科目を終えた時刻も余白へ記録します。

本試験でも記憶があるうちに再現する

試験問題の持ち帰りや自己採点が可能な場合は、解答、迷った問題、記述式の内容、解答順序、時間切れになった場面を早めに記録します。翌日以降は記憶が整理され、実際の判断過程とずれやすくなります。

総合点を3つの合格基準へ分解する

直近の令和7年度行政書士試験では、法令等、基礎知識、試験全体について三つの合格基準が示されました。模試成績も総合点だけでなく、この三つに分けて見ます。

令和7年度の要件 基準 模試で見ること
法令等 244点満点中122点以上 択一・多肢選択・記述式のどこで不足したか
基礎知識 56点満点中24点以上 基準付近で不安定か、得点源が複数あるか
試験全体 300点満点中180点以上 記述式の変動があっても基準を超えられるか

上記は令和7年度の公式基準です。受験年度の公式発表を確認してください。模試会社の判定基準や採点方法が本試験と同一とは限らないため、判定だけでなく得点の内訳と変動を見ます。

全問題を「正誤×確信度」の4つに分ける

模試分析では、正解したかどうかと、根拠を持って選べたかどうかを別々に記録します。正解問題の中にも、次回は失点する可能性のある問題が含まれています。

分類 状態 復習の扱い
A:確信して正解 根拠条文・判例・制度を説明できる 簡潔に確認し、定期復習へ回す
B:迷って正解 二択、消去法、推測で正解した 誤答と同じ優先度で根拠を確認する
C:迷って誤答 候補は絞れたが判断基準が曖昧 選べなかった差を比較表にする
D:分からず誤答 未学習、記憶なし、問題の意味が分からない 出題重要度を確認し、基本教材へ戻る

Bの問題が多い場合、得点は実力より高く見えることがあります。次の模試で同じ程度の点を再現するためには、BとCをAへ変える学習が重要です。

誤答と迷った正解を5つの原因へ分類する

原因 見分ける質問 修正方法
知識不足 必要な条文・判例・制度を学んでいたか 基本教材、条文、範囲別過去問へ戻る
理解・適用不足 知識を事例の事実へ当てはめられたか 要件・効果、原則・例外、人物関係を説明する
読解・識別不足 正しいもの・誤っているもの、主語、例外を読めたか 設問条件へ印を付ける手順を固定する
時間・処理不足 時間があれば正しく判断できたか 制限時間演習、保留判断、解答順序を調整する
戦略不足 難問へ時間を使い、取るべき問題を落としていないか 科目目標、問題の優先度、撤退時間を決める

分析シートに残す項目

  • 問題番号・科目・論点
  • A~Dの確信度分類
  • 5分類の主原因と副原因
  • 根拠条文・判例・教材ページ
  • 誤った判断を一文で説明
  • 次回確認日
  • 再テストの結果と解答時間

誤答原因の一文例

「行政行為の取消しと撤回の効果を混同した」「民法の第三者関係で登記の有無を読み落とした」「二択で迷い、判例の前提事実ではなく結論だけで選んだ」のように書きます。

科目名ではなく論点単位で苦手を特定する

「行政法が苦手」「民法が苦手」では範囲が広すぎて、次の学習が決まりません。科目を制度・論点・問題形式へ分けます。

分野 分解例 分析する誤答
行政法 行政手続法、不服審査法、事件訴訟法、国家賠償法、地方自治法 主体・期限・手続・訴訟類型・要件の混同
民法 総則、物権、債権総論、契約、不法行為、親族・相続 人物関係、時系列、要件、第三者保護の読み落とし
憲法 人権享有主体、各人権、統治、重要判例 事案・争点・判断基準・結論の混同
商法・会社法 商法総則、会社類型、設立、株式、機関、組織再編 会社の属性、機関の権限、決議・任期の混同
基礎知識 一般知識、行政書士法等、情報通信・個人情報保護、文章理解 分野別得点、知識と読解、解答時間の偏り

たとえば「行政法が弱い」ではなく、「行政事件訴訟法の訴訟類型で原告適格と訴えの利益を混同し、C分類が3問ある」のように書ければ、復習対象と方法が決まります。

記述式答案は完成答案との文字比較だけで終わらせない

令和8年度試験案内では、法令等の記述式は40字程度で記述するとされています。模試の記述式は、模範解答と自分の答案の語句を比べるだけでなく、解答に至る段階ごとに分析します。

分析段階 確認すること 必要な練習
1. 問いの把握 誰が、誰に、何を、どの法律関係で求める問題か 設問の主語・目的語・指示語へ印を付ける
2. 論点特定 問われている制度・条文を特定できたか 事例から制度名を答える短答練習
3. 要件抽出 必要な要件・キーワードを挙げられたか 条文を主体・要件・効果に分ける
4. 当てはめ 問題文の事実を要件へ結び付けたか 要件ごとに該当事実を抜き出す
5. 文章化 主語・目的語・結論が明確で40字程度に収まるか 要件と結論を先に置き、不要語を削る

模試の採点結果を本試験の確定点と考えない

記述式の採点方法や部分点は模試ごとに異なる場合があります。点数だけでなく、必要語句、論理、文の構造について添削コメントを確認し、同じ課題が続いていないかを見ます。

時間配分は「どこで遅れ始めたか」を分析する

試験終了時に時間が足りなかったという記録だけでは、修正できません。科目を始めた時刻・終えた時刻、長く止まった問題、見直し開始時刻を記録します。

時間問題 確認 改善
一問に長く滞在 知識不足か、決断できないのか 保留する時間と印の付け方を決める
民法で遅れる 人物関係や時系列を頭だけで処理していないか 関係図を短時間で作る練習をする
記述式で止まる 論点特定・要件・文章化のどこで止まったか 段階別練習と一問当たりの撤退基準を作る
文章理解が未回答 解く順番と残り時間が適切か 文章理解を解く位置を複数の模試で比較する
見直し時間なし 最初から全問を完全に判断しようとしていないか 一周目と二周目の役割を分ける

弱点は「頻度・影響・修正可能性」で順位を付ける

誤答をすべて同じ優先度で復習すると、重要な弱点が埋もれます。各弱点を次の3軸で評価します。

  1. 頻度:同じ論点・原因の誤答が何回あるか
  2. 得点への影響:基本問題、主要科目、合格基準に直結するか
  3. 修正可能性:条文確認、比較表、時間配分などで短期間に改善できるか
優先度 対応
最優先 行政法の基本制度を繰り返し混同、基礎知識が基準未満、記述式が白紙 翌日から学習計画へ入れる
民法の人物関係を整理できず、複数問で時間超過 2週間以内に集中修正する
一度だけ間違えた周辺論点、判断できたが記憶が曖昧 通常復習へ組み込む
難問・未出に近い細部で、他の基本弱点が残っている 記録だけ残し、後回しにする

模試後14日間で分析を得点へ変える

時期 行うこと 完了基準
当日 解答、確信度、時刻、記述式答案、体調を記録 判断過程を再現できる
翌日 採点、A~D分類、5原因分類、科目別集計 最優先弱点を3つ以内に絞る
2~4日目 基本教材・条文・判例へ戻り、比較表を作る 誤りを自分の言葉で説明できる
5~7日目 同論点の類題、記述式の書き直し、時間制限演習 類題でも根拠を選べる
8~13日目 通常学習へ弱点を組み込み、短い確認テストを行う 同じ原因の誤答が減る
14日目 B・C・D問題を解き直し、時間と確信度を再記録 Aへ変わった問題と残る弱点を区別できる

同じ問題を解き直して正解しても、答えを覚えている可能性があります。根拠を説明し、類題や事実を変えた問いでも判断できることを確認します。

模試復習で避けたい8つの失敗

  1. 総合点と判定だけで一喜一憂する
  2. 正解した問題をすべて復習対象から外す
  3. 誤答をすべて知識不足として処理する
  4. 解説を読んで分かった状態を復習完了とする
  5. 科目単位で苦手を決め、論点まで分解しない
  6. 記述式を模範解答の丸暗記で終わらせる
  7. 時間切れの発生時点と原因を記録しない
  8. 一度にすべて直そうとして最優先弱点を決めない

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模試・答案分析のよくある質問

行政書士模試の復習はいつ行いますか?

当日に解答時刻・確信度・記述式答案を記録し、翌日までに採点と原因分類を行います。最優先弱点は14日以内に類題と再テストまで進めます。

模試で正解した問題も復習しますか?

根拠を説明できず、二択や推測で正解した問題は復習します。確信を持って正解した問題と分けて記録します。

模試の判定が悪いと合格は難しいですか?

模試は受験時点の一つの結果です。判定だけで決めず、未学習範囲、確信度、失点原因、時間不足を分析し、その後の模試で改善を確認します。

記述式答案はどのように分析しますか?

問いの把握、論点特定、要件抽出、当てはめ、40字程度への文章化の五段階に分け、どこで止まったかを確認します。

弱点が多すぎる場合はどこから直しますか?

同じ原因の頻度、得点への影響、短期間での修正可能性を基準にします。主要科目の基本問題、基礎知識の基準、記述式の白紙、時間切れなどを優先します。

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まとめ

行政書士試験の模試・答案分析では、総合点を確認したあと、科目・論点・確信度・失点原因・時間へ分解します。迷って正解した問題も復習対象にし、知識・理解・読解・時間・戦略のどこに原因があるかを記録します。

弱点は頻度、得点への影響、修正可能性で優先順位を付けます。模試後14日以内に基本教材、条文、類題、記述式の書き直し、再テストまで進め、次の模試で同じ原因の誤答が減ったかを確認しましょう。

参考文献・一次情報

執筆・監修
川元先生

Lex行政書士予備校 講師。長年にわたりマンツーマン指導に携わり、受講生一人ひとりの状況や課題に合わせた学習支援を行っています。理解度や学習時間を踏まえた、きめ細かな個別指導には定評があります。

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