商法・会社法の勉強法|行政書士試験で後回しにしすぎないための頻出分野と学習戦略
行政書士試験の商法・会社法は、専門用語が多く、似た制度や数字も数多く登場するため、法律初学者が後回しにしやすい分野です。会社法の条文を最初から最後まで読もうとして、全体像を見失う方も少なくありません。
しかし、商法・会社法は、制度をばらばらに暗記するのではなく、誰が、どの機関で、何を決め、誰に責任を負うのかという関係で整理すると理解しやすくなります。
この記事では、商法と会社法の違い、会社の種類、株式会社の設立・株式・機関・計算・組織再編の全体像、おすすめの学習順序、条文と過去問の使い方を初学者向けに解説します。
商法・会社法攻略の結論
- 商法と会社法の対象を最初に区別する
- 会社法は設立から清算までの流れを地図にする
- 4つの会社類型を社員の責任で比較する
- 株式会社の機関は権限・選任・監督関係で整理する
- 数字だけを単独で暗記せず、制度と一緒に覚える
- 過去問の全選択肢を根拠条文へ戻って確認する
行政書士試験における商法・会社法
行政書士試験研究センターの令和8年度試験案内では、「行政書士の業務に関し必要な法令等」46題について、憲法、行政法、民法、商法、基礎法学から出題するとされています。法令は令和8年4月1日現在施行されているものが出題対象です。
商法・会社法は範囲が広いため、学習時間を無制限に増やすべきではありません。一方で、全く学習せずに本試験へ向かうと、基本的な会社類型や機関の問題まで失う可能性があります。行政法・民法を中心にしながら、基本論点を計画的に積み上げます。
出題数や重要度だけで学習の有無を決めない
科目別の出題状況は過去問題で確認し、まず基本問題を判断できる状態を目指します。受験年度の法令基準日と、教材が法改正へ対応しているかも確認してください。
商法と会社法の違いを最初に整理する
商法と会社法は関係の深い法律ですが、学習対象は同じではありません。最初に大まかな役割を分けると、その後に出てくる用語の位置付けが分かります。
| 法律 | 主な対象 | 学習上の軸 |
|---|---|---|
| 商法 | 商人、商行為、商号、商業帳簿、商業使用人、代理商など | 民法の原則と比べ、商取引にどのような特則があるか |
| 会社法 | 会社の設立、株式、機関、計算、社債、組織再編、解散・清算など | 会社、社員・株主、役員、債権者の関係を整理する |
「社員」という言葉にも注意が必要です。日常語では従業員を意味することが多い一方、会社法上の社員は会社の構成員を指します。法律用語を日常語の感覚だけで読まないことが大切です。
商法は民法との違いを意識する
商法の規定を単独で覚えるのではなく、民法の基本原則に対し、商人間や商行為にどのような特則が置かれているかを確認します。「誰に適用されるか」「どの取引に適用されるか」「民法と結論がどう変わるか」を一組にします。
会社法は設立から清算までの地図を作る
会社法の条文は多いため、最初から細部を追うと現在地を見失います。まず、会社が生まれ、資金を集め、意思決定し、活動し、組織を変え、終了するまでの流れに分けます。
| 分野 | 主なテーマ | 確認する関係 |
|---|---|---|
| 総則・会社類型 | 株式会社、合名会社、合資会社、合同会社 | 社員の責任と会社運営 |
| 設立 | 定款、発起人、出資、設立登記、設立時役員 | 誰が何を行い、いつ会社が成立するか |
| 株式 | 株主の権利、株式譲渡、自己株式、募集株式、新株予約権 | 資金調達と既存株主の保護 |
| 機関 | 株主総会、取締役、取締役会、代表取締役、監査役など | 意思決定、業務執行、監督・監査 |
| 計算・資金 | 計算書類、剰余金配当、資本金、社債 | 株主への分配と債権者保護 |
| 組織再編・終了 | 合併、会社分割、株式交換・移転、事業譲渡、解散、清算 | 承認手続と株主・債権者の保護 |
会社法の問題で最初に確認する3点
- どの種類・形態の会社か
- 公開会社か非公開会社か、大会社かどうかなど、問題文にどの条件があるか
- 設立、株式、機関、計算、組織再編のどの場面か
4つの会社類型は社員の責任で比較する
会社法上の会社には、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社があります。持分会社は合名会社、合資会社、合同会社の総称です。まず社員が会社の債務についてどのような責任を負うかを軸に比較します。
| 会社類型 | 構成員 | 責任の基本 | 整理のポイント |
|---|---|---|---|
| 株式会社 | 株主 | 引受価額を限度とする間接有限責任 | 所有と経営、株式、機関設計 |
| 合名会社 | 社員 | 全員が無限責任社員 | 社員相互の人的信頼 |
| 合資会社 | 社員 | 無限責任社員と有限責任社員が存在 | 2種類の社員を区別 |
| 合同会社 | 社員 | 全員が有限責任社員 | 有限責任と持分会社の柔軟な運営 |
「有限責任だから4類型は同じ」とまとめないようにします。株式会社と合同会社は、構成員の地位、意思決定、持分・株式の扱い、機関の仕組みが異なります。
株式会社の機関は役割と関係で整理する
株式会社の機関設計は、会社法でつまずきやすい分野です。機関名を並べて覚えるのではなく、意思決定、業務執行、監督・監査のどの役割を持つかで分類します。
| 機関 | 基本的な役割 | 確認する事項 |
|---|---|---|
| 株主総会 | 株主による意思決定 | 招集、議決権、決議要件、決議事項 |
| 取締役 | 会社の業務に関する意思決定・執行 | 選任、任期、義務、責任 |
| 取締役会 | 業務執行の決定と取締役の職務執行の監督 | 設置義務、構成、権限、決議 |
| 代表取締役 | 会社を代表し業務を執行 | 選定・解職、代表権、第三者との関係 |
| 監査役 | 取締役の職務執行を監査 | 権限、範囲、任期、報告・差止め |
会社の条件を読み落とさない
株式会社の機関構成は一種類ではありません。公開会社かどうか、大会社かどうか、取締役会設置会社かどうか、監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社かどうかによって、必要な機関や権限関係が変わります。
問題文を読んだら、会社の属性へ下線を引きます。そのうえで「必ず置く機関」「置くことができる機関」「置くことができない組合せ」を表で整理します。
決議要件は場面とセットにする
普通決議、特別決議などの数字だけをカードにすると混同しやすくなります。「どの事項を決めるための決議か」「定足数と賛成要件は何か」「定款による変更が可能か」を一つの表にします。
商法・会社法のおすすめ学習順序
STEP 1
商法総則・商行為
商人・商行為と民法に対する特則を整理します。
STEP 2
会社類型・設立
4類型の責任と株式会社成立までの流れを学びます。
STEP 3
株式
株主の権利、譲渡、募集株式などを整理します。
STEP 4
機関
会社の属性別に、権限・選任・監督関係を比較します。
STEP 5
計算・組織再編
株主・債権者保護の手続を軸に学びます。
STEP 6
分野別過去問
誤りの語句と根拠条文を確認して比較表へ戻します。
会社法は、設立、株式、機関を先に固めると、計算や組織再編でも「誰の利益を、どの手続で守るか」を理解しやすくなります。教材の順序と異なる場合は、講座の指示を優先してください。
条文と過去問を結び付ける方法
- 学習範囲の地図を確認する:今の論点が設立・株式・機関などのどこにあるか確認します。
- 主体を特定する:会社、株主、取締役、監査役、債権者の誰についての規定かを見ます。
- 条文を要件と効果に分ける:誰が、どの条件で、何をできるか、何をしなければならないかを整理します。
- 選択肢の誤りを直す:数字、主体、例外、機関名のどこが違うかを特定します。
- 比較表へ追記する:似た制度との違いを一枚に集め、孤立した暗記を減らします。
条文メモの基本形
「対象となる会社」「手続をする主体」「要件」「期限・数字」「効果」「例外」を一行ずつ書きます。条文番号だけを覚えるのではなく、適用場面を説明できるようにします。
過去問は正解番号ではなく誤答原因を残す
商法・会社法では、「公開会社と非公開会社を混同した」「取締役会と株主総会の権限を入れ替えた」「原則だけ覚え、定款による例外を見落とした」のように、間違えた理由を具体化します。
正解した問題でも、根拠を説明できなかった選択肢には印を付けます。翌日、1週間後、1か月後に解き直し、同じ混同がなくなったかを確認します。
商法・会社法の6週間基礎学習計画
| 期間 | 学習分野 | 到達目標 |
|---|---|---|
| 1週目 | 商法総則・商行為、会社法の全体像 | 商法と会社法の対象を区別できる |
| 2週目 | 会社類型・設立 | 4類型の責任と設立手続を比較できる |
| 3週目 | 株式・募集株式・新株予約権 | 株主の権利と資金調達の流れを説明できる |
| 4週目 | 株主総会・取締役・取締役会 | 意思決定と業務執行の権限を区別できる |
| 5週目 | 監査・役員責任・計算 | 監督関係と株主・債権者保護を説明できる |
| 6週目 | 組織再編・解散・全体復習 | 各手続の違いを整理し、弱点問題を解き直せる |
毎週、基本テキスト、条文確認、範囲別過去問、比較表の更新を一組にします。行政法・民法の学習時間を圧迫している場合は、期間を延ばし、1回当たりの量を減らします。
商法・会社法で避けたい7つの失敗
- 会社法の条文を最初から順に暗記しようとする
- 商法と会社法の対象を区別しない
- 公開会社・非公開会社、大会社などの条件を読み落とす
- 株主総会、取締役、取締役会の権限を混同する
- 任期や決議要件の数字だけを単独で暗記する
- テキストを読み終えるまで過去問を解かない
- 法改正に対応していない教材や古い条文をそのまま使う
Lex行政書士予備校の3つのコース
Lex行政書士予備校では、受講生の法律学習経験と現在の得点状況、本試験までの期間に応じて、3つのコースをご案内しています。
商法・会社法のよくある質問
行政書士試験の商法・会社法は何から勉強しますか?
商法総則・商行為の基本を確認し、会社類型、設立、株式、機関、計算・組織再編の順に進みます。まず会社法全体の地図を作ることが重要です。
商法・会社法は捨て科目にしてもよいですか?
学習時間の配分は必要ですが、最初から全範囲を放棄する方法は勧められません。会社類型や基本機関など、基礎論点から取り組みます。
会社法の条文はすべて読んで暗記しますか?
最初から全条文を暗記する必要はありません。基本テキストと過去問に登場する条文を中心に、主体、要件、効果、例外を確認します。
会社法の数字を覚えるコツはありますか?
数字だけを覚えず、対象となる会社、機関、手続、原則・例外とセットにします。似た数字は横並びの比較表にまとめます。
商法・会社法の過去問は何周すればよいですか?
回数よりも、全選択肢の正誤理由と根拠条文を説明できることが重要です。間違えた問題と迷った問題を重点的に反復します。
関連記事
まとめ
商法・会社法は、まず両者の対象を区別し、会社法を設立、株式、機関、計算、組織再編、解散・清算の流れで整理します。会社類型は社員の責任、株式会社の機関は意思決定・業務執行・監督の役割で比較します。
条文は主体、会社の条件、要件、効果、例外に分け、学習した範囲の過去問をすぐに解きます。数字や機関名を孤立して覚えず、制度と比較表へ結び付けることで、基本問題の取りこぼしを減らせます。
参考文献・一次情報
著書・教材紹介
Lex行政書士予備校の講座教材・推奨図書は、受験年度の法改正への対応、商法・会社法の全体像を把握しやすい構成、会社類型・株式・機関を比較しやすいかを確認して案内しています。現在利用できる教材や講座内容は公式サイトをご確認ください。
Lex行政書士予備校 講師。長年にわたりマンツーマン指導に携わり、受講生一人ひとりの状況や課題に合わせた学習支援を行っています。理解度や学習時間を踏まえた、きめ細かな個別指導には定評があります。
※法令・判例・試験制度は改正または変更される場合があります。受験年度の基準日と最新の一次情報をご確認ください。
この投稿へのトラックバック
トラックバックはありません。
- トラックバック URL

この投稿へのコメント